傀儡の恋

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 さりげなく島のあちらこちらに仕掛けた監視装置が侵入者を発見したのは風の強い闇夜のことだった。
「……おそらく五名ほどだな」
 センサーの反応から判断して、とラウはつぶやく。
「あまり近づかれるとあの子達に気づかれるね」
 適当な距離で対処しなければいけないだろう。
 そんなことを考えながら武器を手に取る。
「何処が適当かな」
 ここしばらく、子供達の散歩に付き合っていたおかげで島の地理についてはかなり詳しくなった。もちろん、こういう事態を想定して確認していたと言うことも否定はしない。
 連中は自分たちの立場と目的上、最後まで人目につかないように行動するはず。
 人に気づかれずに接近しようとすれば使えるルートは限られてくる。
「あそこがいいか」
 脳裏にそれらを思い浮かべて、確率の高い場所を選択する。
 そのまま部屋の外へと出た。そして、隣の部屋のドアをノックする。
「マルキオ師」
 同時に中にいるであろう彼に呼びかけた。
『何かありましたか?』
 眠っていたのだろうか。少しかすれている声が返ってくる。
「ぶしつけな客人がいらしたようなので、出迎えに行ってきます。騒がしくなるかもしれませんが、その時はお願いしてもかまいませんか?」
 できるだけそのような状況にはならないようにするが、とラウは続ける。
『仕方がありませんね』
 声がこちらに近づいてきた。そう思った次の瞬間、静かにドアが開かれる。
「あなたも、あまり無理はなさらないように。いいですね?」
 ガウン姿のマルキオの手が宙をさまよう。そして、ラウの肩に触れたところでこう告げてきた。
「極力、善処します」
 はっきり言って、それ以外言い様がない。
「絶対ですよ?」
 マルキオは念を押すように言葉を綴る。
「はい」
 どうなるかはわからない。だが、最初から負けるつもりで行けば勝てるものも勝てない。その事実は過去の経験から身にしみていた。
「では、行ってきます」
 この言葉と共にきびすを返す。そして、屋敷の外へと向かった。
 この後は時間勝負だろう。
「……さて……うまく誘い込めればいいが」
 人数で勝てないのならば、少しでも地の利を味方につけるしかない。そこに誘い込めれば少しは有利になるだろう。
 だが、誘い込めなければやっかいなことになる。
「あるいは、分断するかだな」
 敵がひとかたまりでいてくれるならば、とつぶやく。だが、最初から別々に行動されていればやっかいかもしれない。
 それでも、とつぶやいたときだ。
 森の方からなにやら怒号のようなものが聞こえてきた。
「……あの子達のいたずらも役に立つね」
 男の子達が動物を捕まえるのだと言ってあちらこちらに罠を仕掛けていた。そのどれかに引っかかったのだろう。
「ちょうどいい。利用させてもらおうか」
 そうつぶやくと、ラウは行動を再開する。
 彼の動きにも馬酔いは見られなかった。

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最遊釈厄伝